2021年8月24日に兵庫県芦屋市山手町の高級住宅街でダンプカーが住宅に突っ込む事故が発生しました。
運転手はブレーキが効かなくなったと証言しています。
その現象について、先日はフェード現象について解説しましたが、今回はペーパーロック現象について解説してみたいと思います。
ブレーキが過熱して止まらなくなる事故は減った
昭和の頃まで、具体的は1990年代頃までは車やバイクの性能が年を追うごとに大きく進化した時代でした。
わたしが記憶する限りでは観光バスや大型トラックなどが山道の下り坂で突然ブレーキが効かなくなり事故を起こすケースが多発していました。
それが技術の進化で耐熱性の高いブレーキ構造などになったことで急こう配でブレーキが効かなくなる事故は大幅に減りました。
急カーブの多い場所にある緊急避難所
ネットで「緊急避難所」って何?
といって車のブレーキが突然効かなくなる事故が大幅に減ったことにより、この「緊急避難所」の意味すら知らない人が増えています。
写真のように坂道の途中に左側道に抜けるように上り坂で、かつスグに行き止まり。
これは長い下り坂でブレーキの使い過ぎによってフェード現象・ペーパーロック現象が起こってブレーキが効かなくなった場合に左の側道に逃げることにより、急な登り傾斜となるためブレーキが効かなくなっても車が停止できるように意図的に作られている緊急避難所なのです。
昨日の記事ではフェード現象について書きましたが、本日はペーパーロック現象について解説してみます。
ペーパーロック現象とは
車のブレーキは油圧ブレーキを使用しております。
自転車などはブレーキレバーを握ると、ワイヤーがブレーキの部品を引っ張ることでブレーキが効くようになっていますが、車の場合は自転車と異なり重量があるため重たく、自転車と同じ構造であれば人の力ではブレーキを十分に効かすほどんの力が無いため油圧と真空倍力装置を使って少ない力でブレーキが効く構造になっています。
ペーパーロック現象が発生するのは、この油圧のオイルに問題が発生するからです。
エンジンルーム内にある、フロント窓ガラスの下付近にあるブレーキオイル リザーバータンクです。
この中に入っているのが、ブレーキオイル(ブレーキフルード)が入っております。
このタンクがあるのは、ブレーキを使用するとブレーキパットが擦り減ります。
擦り減った分だけブレーキオイルの量が必要となるためリザーバータンクに余分に入れているオイル量が下がる仕組みです。
特に新車からブレーキオイルを交換して無い場合などは、このオイルの量を見ることでブレーキがどの程度減っているのか?
ということも、100%正確とはいえませんが、目安となります。
オイルが沸騰する
このオイルは世界基準で決められており、種類に応じて「DOT」(ドット)という表記があります。
DOTは3~5の数字で性能表示されており、理解しやすく解説すると最高時速100kmの日本ではDOT3が多く使われており、欧州車ではDOT4が多く使われております。
そしてサーキットなどで走行する車両はDOT5など、数字が高くなるにつれて数字が大きくなるオイルを使用しております。
数字が大きいと高性能とは限らない
やはり素人目線で見ると数字が大きい方が安全性が高いと思ってしまうものですが、DOTの数値が大きくなると確かに沸点は高くなり、価格も高くなりますが、全てにおいて性能が上ではありません。
これが危険!
このブレーキオイルは車検時にオイルの量についての規定はあるのですが、期限についての規定がありません。
ユーザー車検などでできる限り車検を安く・安くしようとすると、ディーラーでは車検ごとにブレーキオイルを抜き取って新しいオイルに入れ替えるのですが、安いだけの車検では整備をせずに車検だけ通ればいいとの考えなので通ってしまいます。
このブレーキオイルが古くなると沸点が下がってくるので、長い下り坂などでペーパーロック現象が発生する危険性が高くなります。
ペーパーロック現象とはどんな症状?
ブレーキは一般的に300℃程度まで上がるといわれております。
当然ですがブレーキが高温になると、部品を伝わってブレーキオイルも熱くなります。
そしてブレーキオイルが沸点を超えるとブレ―オイル内に空気の泡が発生し、ブレーキを踏んでも空気を圧縮するだけなので、ペダルが急に軽くなりブレーキが効かない現象となります。
このような現象が起こるので、せめて車検時の2年に1回はブレーキオイルを交換している方がベストといえます。
ペーパーロック現象は自動車教習所でも習う
ペーパーロック現象は自動車教習所の教習項目で習っているはずです。
すこし思い出してみてください。
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